三月二十六日 赤子


わたしは阿呆にならなければいけない
あかごに戻らなければならない
かたく組み上げて建てた城を
ぜひとも解体しなければいけない
堅牢な城塞に立てこもり
いつか来るかもしれない敵に怯え
日々はがれ落ちる塗装を塗り直し
一番奥にかくれて安らぎを得る
そんな毎日から自分を引き離すのは
容易ではない
自分自身が望んでさうしてゐるのだから
自分から壊すといふ可能性はほとんどない
壊れるとしたらしたがって
外からしかない
自分の力のおよばない
自分ではどうすることもあたはない
自然災害によって
城がけづられていくのを
恐怖に目を見開いて
ながめてゐるしかない
壊され得るものは壊され
捨てられ得るものは捨てられる
大事でないものなどひとつもないのに

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