四月十四日 ギフト


おもひださう
どうしてここまで落ちてきたのか
おもひださねばならない
いかにしてこのものはかくあることを望んだか
ほかのことなどせんなきこと
社会生活経済あるいは人間すら
本来は感心の外であったはず
さうだ
このものは何もしないことを選んだ
自發的な行為を憎み
自分からは何もしようとせず
まはりから行動を強制されることを嫌った
短絡的な自由を慾したわけではないが
自分が自由でないことを薄々感じとり
やさしい世界に塗りつぶされてしかも
そのことに気づかないでゐることが
たへがたかった
たしかに焦りがあったし恐怖があった
自分が知らないままでゐるのは
このものにはふさはしくないといふことを示すのは
自分の抱く感情のみであったが
知らないまま幸せに暮らすよりは
知って不幸に倒れる方がましだとおもった
未熟な少年は子供らしい行動に出た
不幸を求めた
誰よりも大きな不幸を
とてつもない不仕合せを渇望した
もちろん一個の生物としての彼は
幸福なる生を追ひかけた
しかし表面でしあはせを求めつつ
深く見えない所で運命は
彼に贈り物を用意してゐた

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