四月三日 彼らの舞台


自分をかなしい舞台の登場人物とおもっても
観客の目にはこの劇は抱腹のコメディと映るのかもしれない
それはそれでかなしい話なのだが
この物語の主人公たちは
あらがふべき重圧の中でしか
生きることのできない
ハツカネズミのやうだ
脅威におびやかされてゐないと
生存そのものが立ち行かなくなる
平和は彼らにとっては破滅であり
より正確に言へば自滅であって
危機に立ち向かふのは解決への方途ではなく
それ自体が目的なのである
困難は乗り越えられるか押しつぶされるかするものだが
彼らの欲するのはその解消ではなく
困難自体であり
乗り越えるもしくは圧しつぶされることが目指されてゐる
要するに
傘をさしたいから雨天に出游するのである
くもりなき晴天のもとでは生きられない
そんなかなしくてをかしい悲喜劇が
彼らの置かれた舞台である

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