投稿

6月, 2016の投稿を表示しています

近況感想文

まったく自分がかほどにまで社会のお荷物いやごみくずになろうとは思っていなかった 作業服に身を包んで今日も倉庫に向かう 別段悲観しているのでもない嘆くつもりはないしそんな気分でもない わたしはなぜというのか落ち着いている 平静というのではない 悲哀の波も歓喜の渦も渡り過ぎてきた そんな岸辺に打ち上げられてわたしは昔の夢を見た 同級が教授の後ろについて廊下を行くのが窓ガラスの向こうに見える わたしは誰もいない教室に座ってその様子を何となく目で追いかける 目の前の机には本も紙も置かれていない わたしは学校で何をしているのだろうか 建物の上に広がる空には雲がちぎれて流れて行く 疑問はもはやない 雑念すらもない 自分の仕事は何かと問うことはない わたしは求めない ただ空を眺めて何となく思いを漂わせる そうわたしの仕事は現行の共同体の中には存立しないのだ だから生活できないのは仕方がない 同机の者たちが偉くなっていくのを見るのはもちろん嬉しいことではあるが 破れてついに裏も抜け料理に使うタコ糸でぐるぐる巻きにした靴を履いて罵声の中 誰のものともしれない段ボール箱を抱えて急ぐ自分のありさまが素直に祝福する気にさせてはくれない わたしは心の狭い矮人かもしれない しかし同情の余地は認められるだろう 神話の英雄だって一度は心が折れるほどに痛めつけられるものだ わたしはただの人間だ 痛みも感じるし羨望もするおそらく軽蔑もする みな小さなことだ ほんとうに卑小なことだ けれどわかっていても褒められれば嬉しいし 叱られれば気は沈む小さな人間だとはいえ それはそれでよい 感情も思いもすぐに消えていく わたしの関心がそこに囚われ留まることはない それらはどうでもよいことだ 自分にとって落ちるのが必要だったのかはわからない 何とも判断しかねることだ もっともこうして底辺近くまで落とされてみて苦しみとともに気づかされたのは 実は自分は落ちてなどいない 落ちたと感じ低いところに来たと知らず知らずに判断してしまっていただけ 自分の中に気づかれずに存在しまわりのすべてを価値づけしていた尺度に気づいたのは駅の近くの橋を渡っているときだった もっともわたしの問題はその尺度そのものにはなく どのように気づきが起こり