四月十七日 問題
世界観といふ概念は用を爲さなくなりつつある 知といふ観念もあらためる要がある 文化は苦しみのある所にしか生じない そしてその特性上それは調整作業でしかない 哲学は批判的営みとしてそれに寄り添ふ さて人間にそれ以外何があるだらう これ以上何か語るべきことが残されてゐるだらうか 寒さと外敵から身を守るために家を建て 住みやすいやうに内装を工夫し 家族が増えれば建て増して 家が増えれば道をつなぎ たまにはたまったほこりを掃いて捨て 古くなれば壊して建て替へることもあるだらう 人は生きて行くあるいは死んで行く それだけの話であり それ以上の話ではないのに ただひとつ問題があるとすれば わたしがその複雑な社会といふ織物の 一構成要素を成してゐること つまり言ひかへれば わたしも人間だといふこと わたしはその中にゐるのであり 外に立って眺める立場を恣意することはできても 実際に出ることはあたはない ただ勘違ひをすることはできるといふことが 問題なのである