四月六日 なきごゑ


乳飲み子が突然に泣きわめく
幾人かが不快に眉をひそめる
こはれたおもちゃのやうに
けたたましく耳障りな騒音
母親があわてて手をのばし
胸に抱いてあやす
お腹がすいてゐるのだらうか
何らか不満があるのはたしかで
叫び声によって周囲に不愉快を与へ
まはりはその不快を解消すべく
赤ん坊の世話をする
わたしもないてみようか
理路整然と説明するより
言葉にできずに叫ぶ方が
本当に苦しんでゐる感じが伝はるだらう
しかし大人がないても
白い目でにらまれ
つまみ出されるだけだらう
子供がゆるされるのは
無力で自らの力では解消できないからだ
ならばよい年をした大人であっても
自分ではどうしやうもない問題なら
ないてもよいのではないのか
実際ないてゐる者はたくさんゐる
みな涙のあとをつけて働きに出る
こらへきれずに人前で泣き出すものもある
なのに誰も助けてくれないのは
大人なのだから自分で対処するべきなのと
周囲の者にもどうにもできないことがらなのと
かくしてゐるだけで彼ら自身も
仮面の奥の素顔は泥にまみれてゐるのと
したがって他人をかまふ余裕がないのと
いらだちと
あと何にせよ
不寛容あるいは無関心ゆゑではない
乳を求めてなく子だって
まはりに男しかゐなければ
放って置くしかないだらう
放置された子は泣き続けるのだらうか
疲れ果てて声を上げる力を失ふまで
さうしてしづかになったとき
どういふ心でゐるのだらう
助けを求めても
救はれなかった子は


どうなるのだらう

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