二月十六日 生活
一人で生きて行かねばならなくなってはじめて見えて来たものがある 思ひ返せば私のまはりにゐた人々は多かれ少なかれ社会的生存を模索してゐた 社会内で居場所を見つけ自立できるやうにと動いてゐた 一方で私はさういふことがらに一切無関心であった さういふ方面のことが全然目に入ってゐなかった 金とは獲るものではなく与へられるものとおもってゐた 生存に不安などなかった その種の不安は自分には無縁とおもってゐたし 実際つい先日までさうだった 食べて生きてゐること 生活をしてゐること サバンナに暮らす豹の番組を眺めて感心しつつ 自分の境遇も同じやうなものとは考へもしなかったし さうおもったとしても あはれみや共感などのきはめて人間的な感情からであって 切羽詰まった現実味は伴はなかっただらう 今は一寸先は闇の中を歩いてゐる心地で だからお菓子にまったく惹かれなくなったのかもしれない 両親の支援相方の庇護 その傘の下から無理に追ひ出されてはじめて 私は今自分の生存自体に不安を感じてゐる ある意味 他の人々のあり方心の持ちやうに共感し得る素地が やうやくこの私にも備はるのかもしれない ―――――――――――――――――――――――――――――――――― ビジネスの組織にも色々あるやうだけれど、人を差別化し、階層の分化の発生する、負けないために競争して勝つしかなくなる、上に登り続けるしかない、こんな底辺層の組織形態しか、私は自分の仕事場を選べなかった。かうした組織に所属して働いてゐると、これでよいのか、ここに正義はあるのか、と心中問はないで過ごせる日はない。尊厳?職場以外のどこかにあるのだろう。