投稿

2月, 2019の投稿を表示しています

二月十六日 生活

一人で生きて行かねばならなくなってはじめて見えて来たものがある 思ひ返せば私のまはりにゐた人々は多かれ少なかれ社会的生存を模索してゐた 社会内で居場所を見つけ自立できるやうにと動いてゐた 一方で私はさういふことがらに一切無関心であった さういふ方面のことが全然目に入ってゐなかった 金とは獲るものではなく与へられるものとおもってゐた 生存に不安などなかった その種の不安は自分には無縁とおもってゐたし 実際つい先日までさうだった 食べて生きてゐること 生活をしてゐること サバンナに暮らす豹の番組を眺めて感心しつつ 自分の境遇も同じやうなものとは考へもしなかったし さうおもったとしても あはれみや共感などのきはめて人間的な感情からであって 切羽詰まった現実味は伴はなかっただらう 今は一寸先は闇の中を歩いてゐる心地で だからお菓子にまったく惹かれなくなったのかもしれない 両親の支援相方の庇護 その傘の下から無理に追ひ出されてはじめて 私は今自分の生存自体に不安を感じてゐる ある意味 他の人々のあり方心の持ちやうに共感し得る素地が やうやくこの私にも備はるのかもしれない ―――――――――――――――――――――――――――――――――― ビジネスの組織にも色々あるやうだけれど、人を差別化し、階層の分化の発生する、負けないために競争して勝つしかなくなる、上に登り続けるしかない、こんな底辺層の組織形態しか、私は自分の仕事場を選べなかった。かうした組織に所属して働いてゐると、これでよいのか、ここに正義はあるのか、と心中問はないで過ごせる日はない。尊厳?職場以外のどこかにあるのだろう。

労働紀行 二月十五日 自分の居る場所

ここはスラムなのだと得心した 何もできない私はここに流され落とされたのだと 毎日が絶望との格闘の中で いつまで徒手で立ち続けてゐられるものか 未来は暗黒色に覗く者の目を吸い寄せる 驚きだよ 自分はこんな世界に生きてゐたのだ 周囲のことを知らなさすぎた なるほど 本当に何の誇張も気負ひもなく 素直な心で言へる 地獄といふのはここなのだ ためらひなく私の月給二ヶ月分を払ふ客 対比を意識せざるを得ない この差はなんなのか 客は成功者で私は失敗者 鬱屈し澱んだ感情が重く垂れ込める 私はどうしてあちら側にゐないのか なんでこちら側なのか あっちにゐたらこのやうなこと頭に浮かびもしなかったらう 出稼ぎ労働者の気持ちが今はわかる 社会構造への不満といふより 不甲斐ない自らへの自責の念 家族に対する申し訳のなさ そして恥

労働日記 二月十四日 はとのめ

いかに安く腹を満たすかだけを考えて、コンビニ弁当の前をうろうろする。 腰の曲がったおばあさんが紙袋をさげて歩道の端を歩いている。 弱肉強食、社会的地位、上下、差別、これでよいのだろうか。 労働者には苦しみしかない。 ―――――――――――――――――――――――――――――――――― 人間を知りたいなら あそこにゐるはとを見てごらん どこにでもゐるふつうのはとの まんまるおめめをのぞいてごらん 何が見えるかな 何が映ってゐるかな 地面のぱんくづ 美しき異性 快適な寝床 さういふものが映ってゐるけど どういふ色合ひをしてゐるかな 希望はある ううん 夢は みえない さうなんだ 元々備はってゐた ひとみの透明はうしなはれ 混濁と混乱が染み込んでゐるんだ もうほとんど見えてゐないのかもしれないね それでも 濁りきったまなこでも たのしい光景は見つからないし 日々の生活がつらいから 探す気力も残ってないんだよ 絶望といってよいのかな いやたぶん それよりもっと残酷なものだよ 人間を知りたいなら みてごらん ふつうのはとの まんまるおめめを のぞいてごらん

出稼ぎ

経済的事情から、家族と離れ、単身地方に働きに出ることになりました。 ――――――――――――――――――――――――――――――――――――― むなしさ 世界のむなしさ 人間全部のむなしさ 鳥たちのむなしさ みんなのむなしさ 時代のむなしさ 私たちはこの中にいて 外に出ることはできない