四月十五日 小櫻


くさりにつながれた老犬が
所在なげにたたずむ
高く晴れやかなる空
にほひたつさくらばな

遠目に見える
毛はぼさぼさで
何ヶ月もあるいは何年も
手入れしてもらってゐないのだらう

そよそよと吹く風が
あたたかい空気を運んできて
やはらかく
花びらをなでてゐる

犬が動く
くさりが音を立てる
家の中の飼ひ主の
不興を買ふまいと
おとなしくしてゐる

誰もゐない小さな公園の隅に
灌木にまじって小さな櫻が生えてゐる
日があまり当たらないのか
花つきはよくなく
こぶりな花がこげ茶の木肌に
ぽつんとついてゐる

にほひこぼれる
櫻の並木に
何も感じなかった心が
少しだけとかされる気がした

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