四月十六日 簡単な選択


実に単純な問ひなのだが
この世は生きるに値するだらうか
本当ならこの大事なそして当然の質問は
生まれる前になされるべきであった
あなたは生まれますか生まれませんか
今生に関する十全な説明のあとで
いったいどれだけのものが生を選択するだらう
いやさうではないのかもしれない
我々はたしかに自ら選んだのだ
生きることは何かたのしいことにおもへたのだ
空想によって生じた未来はすばらしく
そこから逆照射される現在も
色とりどりの花が乱れ咲く楽園に見え
よろこびと共につかんだ生存はしかし
実際にやってみると
おもひ描いた天国の完全なる反対で
うめき声の満ちる暗鬱な谷だった
もともと賢明なものは生を選ばなかったのだから
ここにゐるのはみな阿呆の一類であり
かなしき道化だ
仲間同士で寄り合って
あらそったりなぐさめたりするうちに
あらふしぎ
この世のできあがりだ

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