あり方といふ問題(一)

満たされた豚であるのがよいか、満たされない豚であるのがよいか、畢竟かういふ問題でせうか。

満たされた豚は安心し、ぐっすりと眠ってゐます。満たされない方は、飢ゑに苛まれ、何か食べるものを欲して血走った目で奔走してゐます。前者は肥えて落ち着きがあり、後者は痩せ細り時々大声で叫びます。

どちらであるにせよ、様態の違ひが存するのみで、どちらも豚であるといふ点に変りはなし、ならば穏やかでより紳士らしい前者であるのが望ましい、といふことになりさうですが、はて。

そもそも、満足してゐない豚は、満足してゐる豚に成ることを目指してゐるわけですから、両者の違ひは、まだゴールしてゐない途中にあるか、すでに完走し休憩してゐるか、といふ点にあるのでせう。

もしさうならば、どちらの豚であるのがよいか、といふ問ひに答へるのは難しくありません。未完成の作品と完成した作品と、どちらがより好ましいか、といふ選択に似てゐます。お腹がすいてゐる場合、より価値が高いのは、まだ収穫されてゐない麦ではなく、すでに炊きあがった麦飯なのです。

満腹の豚は憩ひ、空腹の豚は愁ふ。

話は単純なのですが、どこかかすかな違和感が生じてゐるやうにおもふのです。気のせゐでせうか。


つづきます




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