四月十一日 生存


公園で男の子が犬を追ひかけまはしてゐる
犬も男の子もたのしさうだ
走り疲れて子供はベンチに腰をかけ
小さな犬が膝にのる
ふたつの目はたなびく雲を追ひ
そらの下茫洋と時にたゆたふ

我々は気づかないから生きて行けるのであって
それはある種の無知ではあるが
不幸ではなくむしろあるべき仕方であって
ほほゑまれるべき様子なのである

かばんを手に電車にかけこむ男は
すんでで間に合ったことに胸をなでおろす
かつて犬と見た景色を箱にしまひ
いま彼は吊り革広告をながめる

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