五月二十六日 おだやか


のどがいがいがするので

せきばらひをしてゐると

がまんできなくなって

おもはずはいてしまった


あかかった

一瞬ときがとまった

そしてわたしは

見なかったことにした

考へるのをやめた


驚くほどに心は穏やかで

波風ひとつ立ってゐなかった

いま思ひ返せば

そのことがむしろ異常なのだった


予想を越えた悪事が起こると

人は認識するのをやめるらしい

何もなかったことにするらしい

そしてその試みは容易に成功するのだ


いまもわたしは落ち着いてゐる

致命傷を負った獣も

同じやうな心境なのではないか

痛みはもう感じず

何かしようとも思はず

ただ穴の奥にひそんで

じっと息をするだけ

あせりも不安も希望も恐怖もない

何も生じない


本当にどうすることもできない事態に遭遇すると

どうかうすることもないし

何かをしようとする意志すら生じないので

一見すると

平和そのものだ




コーヒーか

緑茶かまよふ

吐血かな



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