五月二十八日 天の譜


一日の仕事を終へて

折れ曲がった路地を行く

木でできた塀の一部が破れ

今朝はそこから三毛猫があらはれた

角を左にまがると

空き地があって

車が何台かとまってゐる

その向かうに

空がひろがる

太陽のやさしい光にあてられて

あはくとけあひ

一幅の絵画が完成される

村人は覚えず足を止め

陶然とたたずむ

もし自分に才があったら

この空と雲の刻々の転変に

曲想を感じとり

音楽の奏でられるのに

ただ耳を傾けることができただらうに

学校ではト音記号は習ったけれど

天空といふ譜面の読み方は

教へてくれなかったな

もしも教へられてゐたら

大きな街の音楽堂まで足を運ばないで済む

下手かもしれないしうまく鳴らないかもしれないけど

たったひとつの音楽がきけたのに


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