五月九日 人にできること


人間にできることはひとつしかない
わき目もふらずに邁進し
与へられた時のほとんどを費やしたあと
もう残された時がなくなって
はじめて我に帰り
あぜんとする
これだけだ

そして人は十二分に愚かなので
このやうに記してもまだ
自分には自由があると
ちがった過ごし方を選べると
希望を抱いてしまふことができる

いまはのきはになってはじめて
気付くことができるのだが
気付いたとしてもすでに何をすることもできない
時間は残されてゐない
だから呆然として
せいぜい
ああとつぶやく他ない

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