四月十九日 自由意思
これは個人的な状況ではない
わたしたちは今
どうして生きられてゐるのか
不可思議な状態にある
からうじて生存を保ってゐられるのは
手元にピストルがないからに過ぎない
飲めや歌へやの騒ぎが深夜まで続くが
意識を手放し眠りに落ちた人々は
朝を迎へねばならない
こちらの意思は考慮されない
迎へたくなくても迎へたくても
迎へなければならない
わたしたちは起床した
たしかにさうだが
みづから選んだわけではない
では選択肢を現実にしてみようか
枕元の目覚まし時計のかはりに
一挺の拳銃を置いてみよう
するととりあへずほとんどの者は
こめかみに銃口をあてるだらうが
それで引き金を引かない者は
みづから生を望みみづからの意思で生を選んだのだ
さうこれが
わたしたちに与へられた
自由意思なのである
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