春景蕩々

今日は三月月末ですね。

「弥生のつごもりなれば、京の花、さかりはみな過ぎにけり」(源氏・若紫)

弥生のつごもりは現在の太陽暦では五月下旬頃にあたるでしょうか。

昔ははるか、京も東になりまして、花は今がさかりであります。


桜の花というのは、やはり他に比べるもののない、特異なものだと、今日のような日はあらためて感じます。

近所の公園を歩いていた私の頭に浮かんだ漢字は、「駘蕩(たいとう)」でした。今日の日柄はまさにそれでありましたな。

一隅に、公園の清掃、世話をする管理事務所の小屋があるのですが、そこに無造作に干されてある雑巾でさえ、普段はただ汚ならしいだけですが、花弁のひらひら舞い落ちる下では、ずいぶん雅趣のあるもので、全体として調和の破れるところなく、春の一景をなしておりました。

この国に住む人間には、特に言葉を尽くして説明する要もないことです。

今朝偶然に行き当たりました一節を引いておわりと致しましょう。

「・・・今ひときは心も浮き立つものは、春の気色にこそあんめれ。鳥の声などもことのほかに春めきて、のどやかなる日影に、墻根(かきね)の草萌えいづるころより、やや春ふかく霞(かす)みわたりて、花もやうやう気色だつほどこそあれ、・・・」(徒然草第十九段)

・・・一際心も浮き立つものは、春の気色でありましょう。鳥の声なども格別に春らしくなり、のどかな日の光のなかに、垣根の草が芽吹き始めるころから、少しづつ春が深くなり、かすみがかかって、桜の花も段々開いてくるころに、・・・


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