桜がひらけば春が来る
かへるがないて
つばめ舞ふ
この地の人は笑顔になる

花見にひきずりだされて
幽霊のやうにふらつく
天下第一のさくらばな
このこころにはうつらない

しゃがんだ人が手招きする
スミレが咲いてゐる
薄紫の小さな花弁は
端が踏まれて折れてゐる

誰かがしゃべる
桜がそそぐ
痛みを覚えて
そっと胸をおさへる

男の子が人波を
すり抜けて行く
振り返って呼ぶと
親はカメラを向ける

花の向かうに
青い空
あかるげな声が満ちる
木漏れ日の下

失はれた過去を取り戻して
記憶の水面に花が浮く
悲しさうな目をして
見つめる人がゐる

桜がひらけば春が来る
かへるがないて
つばめ舞ふ
スミレが咲いて
この地の人は笑顔になる


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