みづうみ

みづうみのほとりに身を運び
かなたをのぞむ
おだやかな湖面
舟も鳥も浮かばず
午後を告げる鐘が鳴る
休んでゐた人は
思ひ思ひに散ってゆく


門口に巣を見つけた
一匹の蜂が作ってゐたが
よく見ると動いてゐなかった
水をかけると離れたが
脚が一本ひっかかってゐる
しばらく宙吊りでもがいてゐたが
ぽとりと地面に落ちた
脚は途中から切れてゐた
もう飛ぶ力がないらしい
信じがたいことに
自分の脚を巣に埋め込んでしまひ
長い間動けずにゐたやうだ
小一時間歩いたり壁をのぼってみたり
用事から帰って見ると
姿は消えてゐた

大きなけやきの陰で
みづうみを見つめる
湖面はおだやかで
水鳥のひくあともない


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