労働紀行 二月十五日 自分の居る場所
ここはスラムなのだと得心した
何もできない私はここに流され落とされたのだと
毎日が絶望との格闘の中で
いつまで徒手で立ち続けてゐられるものか
未来は暗黒色に覗く者の目を吸い寄せる
驚きだよ
自分はこんな世界に生きてゐたのだ
周囲のことを知らなさすぎた
なるほど
本当に何の誇張も気負ひもなく
素直な心で言へる
地獄といふのはここなのだ
ためらひなく私の月給二ヶ月分を払ふ客
対比を意識せざるを得ない
この差はなんなのか
客は成功者で私は失敗者
鬱屈し澱んだ感情が重く垂れ込める
私はどうしてあちら側にゐないのか
なんでこちら側なのか
あっちにゐたらこのやうなこと頭に浮かびもしなかったらう
出稼ぎ労働者の気持ちが今はわかる
社会構造への不満といふより
不甲斐ない自らへの自責の念
家族に対する申し訳のなさ
そして恥
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